movie / comic / philosophy / アウトプット用ノート

「バットマン ザ・フューチャー 甦ったジョーカー」

f:id:mdrbm:20200502164006j:plain

バットマン ザ・フューチャー 甦ったジョーカー」
製作:2000年 アメリカンアニメーション
監督:カート・ゲダ

■あらすじ
ブルース・ウェインバットマンを引退してから20年後のゴッサムシティが舞台。‪
新星バットマンとしてブルースとタッグを組みゴッサムシティを守る元不良少年テリー。
いつものように街の治安を乱すジョーカーズと対決したところ、その背後にいたのはなんと"あのジョーカー"であった。
すでに死んだはずのジョーカーを前に混乱し、テリーにバットマンを辞めるよう言い出すブルース(本当は心配だからなのだがそれが素直に言い出せない性格は健在)。対してテリーは「バットマンであるから自分には価値がある」と拒否、頑固者同士でいつものケンカモードに。
その後、ジョーカーを知らないテリーはブルースのただならぬ態度から、現警察本部長であり元バットガールでもあるバーバラ・ゴードンに話を聞くが彼女もなかなか口を開こうとしない。ついに重い口調で彼女が語り出した過去には、元ロビンであるティム・ドレイクが深く関わっていたのだった。

■ストーリー詳細&書簡(ネタバレあり)
日本でも1992年から1993年に放送された『バットマン アニメイテッド』の約40年後が舞台。
キャラデザも『バットマン アニメイテッド』に忠実かつ声優さんもほぼ同じで嬉しい限り。
80歳のおじいちゃんブルースやバーバラ・ゴードン、ティム、ジョーカーやハーレイなどお馴染みキャラの当時&その後の姿を見ることができる非常に楽しい本作。
ただし、内容はかなり暗くジョーカーという存在が数十年後の未来にも影響を与え、悪夢として当事者たちを苦しめ続けている世界である。

本作では元ロビンであるティム・ドレイクが特にその被害者として描かれている。
ロビン時代にジョーカーによって3週間にも及ぶ拷問の末に精神支配を受けたティム。バットマンバットガールが救出したが、その際にジョーカーはティムと対決したが結果的に不慮の事故で死亡。ティムの名誉のため警察は事件を公にはしなかった。一命を取り留めたティムだが完全復帰はならず、その後はバットマンの元を離れて今は妻子と幸せに暮らしている。
※別バージョンで事故ではなくティムがジョーカーを撃ち殺すものもある

この時点でかなり辛いが、そこから突如現れた死んだはずのジョーカーの正体へと話は繋がっていく。
これまでジョーカーは世間の人々を自分のようにすべく、笑いガスや毒を撒き散らして次なるジョーカーを作り続けてきた。そして、ティムの拷問時にも彼の身体に自分のDNAを刻みいつの日かジョーカーになるよう仕掛けをしていたのだった。それは本人も気付かぬうちに徐々に長い年月をかけてジョーカーに変貌していき、ついにティムの中のジョーカーが完全に覚醒した。
不慮の事故とはいえティムが殺してしまったジョーカー=ティムだったというなかなかに重いオチ。ロビンを傷付けたという過去のトラウマからいまだ解放されないブルースにはこの上ない悲劇である。

状況を察したテリーはやむなくティムと対決。ほぼジョーカーに精神を支配されているものの元ロビンとしてのスキルは健在で手強い。テリーは機転をきかせ精神攻撃によって圧倒、最終的にティムは正気に戻り事件は解決した。

ラスト、入院するティムのところへ過去の後ろめたさの残るブルースがやってくる。
部屋の扉の前でブルースはテリーに対して「バットマンであるから君に価値があるわけではない。君が君だから価値があるのだ」と言って部屋に入っていく。
バットマンという存在を肯定的に捉えちょっと大人になったブルース(80代)と、バットマンアイデンティティを求めることを止めた新星バットマンの心が解けたワンシーン。直前までが辛すぎただけに感極まる。
そこで物語は終了なのでその後はご想像にお任せしますという感じだが、ティムとちょっとだけまた仲良くなれたのかな?こんな風に過去のトラウマを少しつづ清算をしていけたらいいねブルース?なお話でした。

また、本作以外にもコミック等でジョーカーがロビンに酷い拷問をするシーンは多々登場するが、その行動原理がロビンが憎いからというよりバットマンの気を引きたいからというのもロビンからしたらまたったもんじゃない。とくにこのアニメ版はビジュアルがポップなカートゥーンなだけにギャップがまた怖かった。

個人的にはハーレイの再登場がかなり嬉しい。最後におばあちゃんハーレイや孫まで出てくる。過去回想シーンでメンヘラ時代の元祖ハーレイが登場するがミスターJとラブラブでかなり幸せそう。すごい可愛い。