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『僕が君を殺すまで』

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『僕が君を殺すまで』柳沢ゆきお

「殺人を犯したものはすべからく死刑とし、その刑の執行は加害者が殺人を犯すまでの過程を完全再現した空間で被害者に扮した執行人が行うこととする」
目には目を歯には歯を。加害者に被害者の苦しみを追体験することで贖罪、懺悔させ、そして人命の尊さを人々に示すため、この「新死刑法」が制定された世界。

恋人を殺した死刑囚(織田)と、その殺された恋人(渡瀬)と同じ顔を持つ死刑執行人(水谷)。確固たる絶望的な結末を知りながらも惹かれ合う二人。複雑な相関図の中で描かれる情緒は素晴らしいの一言。連載誌の移動やページ数の問題もあってから後半で失速したのが心底悔やまれるがそれを抜きにしても傑作。

魔夜峰央原画展

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これぞ原画展をやる意味よと迫力の生原稿の数々に感動した本展。
魔夜峰央作品は学生時代に『パタリロ』と美少年系の作品を数冊通った。パタリロシリーズはマライヒの可愛さに魅かれて60巻くらいまでは読んだ記憶があるが、まさか100巻まで達していたとは。(本展はパタリロ100巻発刊記念展)

原画展の会場は西武池袋のギャラリー。
原画300点に加えてラフ画、当時連載していたコミック誌、大判タペストリーなどが飾ってあり、魔夜峰央のコメントも至るところに展示。このコメントの数が豊富で嬉しい。原稿の制作秘話や背景への理解を深めるとともに、久しぶりに作品に触れる者としても解説により内容をより鮮明に思い出せてありがたい。

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展示原画は怪奇系、美少年美青年系と大きく二つのコーナーがあり、その合間に『ラシャーヌ!』『パタリロ!』『翔んで埼玉』等々の原画が並ぶ。
もちろんパタリロコーナーが一番のお目当てだったが、実際には『ラシャーヌ!』に最も圧倒された。
著者コメントに「当時の流行りには乗りたくなくて線のタッチは模索してこだわっていた」というだけあって、筆の強弱と全体のバランスが絶妙で非常に引き込まれる。改めて魔夜峰央の技術と魅力を思い知った。
また、空間恐怖症っぽいところがあり背景を埋めずにはいられないとのコメントで目にしたが確かに。だいたいの背景に薔薇やらなんやらが舞っているがそういうことだったのかと納得。それにしてもその空間を見事に埋めるそのセンスは流石としか言いようがない。

オリジナルグッズも豊富に展開していた。図録には展示してあった著者コメントも収録されていたのでしっかり買って帰った。大満足な展示会。

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パタリロ!」100巻達成記念 魔夜峰央原画展
2020年11月3日(火・祝)~11日(水)
https://www.hakusensha.co.jp/patalliro100/genga.html

 

「Hazbin Hotel(ハズビンホテル)」

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「Hazbin Hotel(ハズビンホテル)」
https://youtu.be/Zlmswo0S0e0

アメリカのアーティスト ヴィヴィアン・メドラーノらが制作したカートゥーン
セクシャルマイノリティ、薬物、ポルノネタなどなどを多用する大人向けアニメ。2019年にYouTubeパイロット版を発表。アマチュア(と言ってもほぼプロ)が完全に有志で制作したにも関わらずめっちゃくちゃクオリティが高い。30分間ずっと動く動くビックリするくらい動く。
そのクオリティの高さとネタの過激さも相まって中毒者が続出している。

▼あらすじなど作品の詳細はこちら
Hazbin Hotel Wiki
https://hazbinhotel.fandom.com/ja/wiki/Hazbin_Hotel


つい数日前に念願の日本語吹替版(パイロット版)も公開された。今まで日本語字幕をアップしてくださっている方の動画を観ながらなんとなく内容理解はしていたが、公式からってのやはり嬉しい…!思っていたより放送禁止ワードに遠慮がない。

▼日本語吹替版「ハズビンホテル」
https://youtu.be/voYG2NrU5iQ


ハズビンホテルの魅力で特筆すべきは劇中歌、キャラデザ。
主人公のチャーリー(そして作者)がミュージカル好きで時たま挿入されるミュージカルパート。チャーリーがテレビ出演時に歌う早口ソング「Inside of Every Demon is a Rainbow(悪魔は皆心に虹がある)」のキャッチーさ、オープニングテーマ「I'm Always Chasing Rainbows」は抜群に引き込まれる。

そして、圧倒的に魅力的なキャラクターの数々。ぜひとも一覧を見ていただきたい。悪魔の住人たちという設定もみんな好きなやつ。

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▼キャラクター一覧
https://hazbinhotel.fandom.com/ja/wiki/キャラクター一覧


2020年8月にA24によるテレビシリーズの制作が公式に発表されたとのことで、これからさらに知名度があがるであろうハズビンホテルに幸あれ。グッズとかいっぱい作ってね。

パイロット版パート2もあるよ(英語版のみ)
https://youtu.be/7Q3gYQaTnpQ

人間のストレス発散方法はいくつかあるが、泣くこともその一つ。
涙が流れた瞬間、副交感神経が交感神経よりも優位になりリラックスモードとなるとともに、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促すACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を外に出してくれる。
疲れてストレスが溜まっている時こそ、思い切り泣くのは何よりのストレス解消法である。

と、全ページが人生に役立つ知識で溢れている私の愛読書『アウトプット大全』(樺沢紫苑著)に記載されているので、個人的に涙を流して泣ける映画ベスト3。

1位 パディントン2
2位 レゴムービー
3位 フランケンシュタインの花嫁

3位にランクインさせたジェームズ・ホエール監督の「フランケンシュタインの花嫁」(1935)。フランケンシュタインシリーズは原作含め大好き。実に人間らしい葛藤と不条理で溢れている。本作は原作とストーリーは違う、かなり違う。

以下、ネタバレあり。

本作ではラストで怪物が己の運命を嘆き、自らの意思で命を断つ。人間の心を持ちながらも誰一人として怪物を人間と認めず愛さなかった世界で、怪物は自ら命を断つという選択をすることで、己が人間であるということを証明するというなんとも皮肉な展開。人間以外の生き物が本能的に行わないこと、それは自殺と内省だという。死をもって確立するアイデンティティ。悲惨な怪物の存在に涙した記憶があり、この不条理さは原作にも通ずるものを感じた。

哲学者アリストテレスは著書『詩学』の中で、悲劇を見ると心の澱のようなものを排出され、心の浄化(カタルシス)に繋がると述べていたという。
恥ずかしがらず泣くこと大事…!

「ヒーロー・ネバー・ダイ」

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ハードボイルドな男たるもの無念のまま死んでいった相棒に対する最高の餞は、死んだ相棒と一緒(そのまんまの意味)に敵地に乗り込んで暴れまくり一矢報いた上で、死んだ相棒の手で憎き敵の頭を撃ち抜くこと。
ジョニー・トー監督作のファンタジー・オブ・ファンタジー。それなりに色んなバディもの見てきたつもりだったけど、もうわかんない。香港映画初心者の今の私には難しいとかじゃなく一生理解できないって思うくらい頭が混乱したクレイジー映画でした。語彙力ゼロな感想しか言えないことを許してほしい。

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コンタクト歴約15年にして初めてハードコンタクトを使うこことなった。
理由は特に大きなことがあったわけではない。活字の本を積極的に読むようになってから文字が見えづらい気がして、度数があってないのかと思い病院に行ったところ、右目が極度の乱視&円錐角膜でソフトコンタクトでは矯正不可能な状態な陥っていることが判明。結果、ハードコンタクトならまだなんとか矯正可能なので切り替えましょうとなった。

ハードコンタクトの値段は2万ちょっと(だったと思う)。約2年使用できるとのこと。製品のオプションによってら使用を開始して半年間は交換可能なので、度数がやっぱり合わないと思っても安心。

使用を開始して約4ヶ月くらい経過するが、一番のデメリットは着け心地。ソフトよりも違和感があり、眼科の先生曰く人によっては初回ただ目に入れただけのその痛みに耐えられない人もいるとのこと。また、ゴミが入った時の痛みは尋常じゃない(目がもげるくらい痛い)。違和感については時間が経過すれば慣れるが、私の場合は右目の円錐角膜のせいで眼球とコンタクトの密着が弱くゴミが入りやすいため、一日のうち何回かコンタクトを外して洗浄する時もある。問題のない左目はそんなことはないのでその人の眼球の状態によっては着け心地問題はすぐに解消すると思う。
また、ハードは失くしたら最後なので洗顔や目が乾いている時は落ちないように注意が必要。瞬きの合間に結構簡単に落ちる…!

メリットとしては、コスパとコンタクト購入の手間がないことかなと。
以前は一ヶ月5000円くらいのコンタクトを使用していてその沼から抜け出せなかったのと、いちいち在庫を気にして注文するのが少し面倒だったのでその点はストレスフリー。

私のこのような乱視&円錐角膜だと人によっては手の施しようがないケースもあるとのこと。正直、10年くらい眼科で目の検査をしていなかったのでその間に進行した模様。反省…皆さんも目は一生ものなので定期的に検査に行くことをオススメします。

ジャッキー作品BEST3(暫定) 〜香港時代編〜

 

成龍=ジャッキー
※ドラゴン=作品関係なくジャッキーお決まりのキャラ名なのでドラゴンばっかでも気にしない


【1位】「プロジェクトA

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★主演、監督、脚本、武術指導

これが無理なら他は見なくてよし!ロマンと冒険の香り漂う20世期初頭の香港を舞台に、ドラゴン隊長(ジャッキー)率いる海軍の海賊撲滅極秘作戦"プロジェクトA"が今決行する!
アクションとコメディを芸術的な域にまで昇華させた数ある成龍作品の中でも最強の超傑作。「娯楽としてとの映画の楽しさを再認識させられました(30代女性)」言葉はいらない、とにかく観て。吹替で観て(大切)。ジャッキースリルジャンキー伝説を語る上で欠かせない時計塔からの落下シーンが見れるのもこれ。


【2位】「酔拳2

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★主演、監督

中国で語り継がれる伝説の武術家 黄飛鴻(ウォン・フェイホン=ジャッキー)が、国宝を外国に売り飛ばそうとする売国奴たちと激しいバトルを繰り広げる!
酔拳の使い手であるフェイホンの技の数々は華麗で見応えあり!(酔拳自体がビジュアル的にも映えるので面白いよ)しかし、同時にアル中でもあり葛藤に悩みながらメソメソ泣くジャッキーがかわいい。いい歳こいてのガチ泣きかわいい。禁酒によりピンチに陥ったラストシーンでのパワーチャージがかなりクレイジーでエグいのでお楽しみに。また、フェイホンに負けないほどコメディ要素たっぷりで魅力的なキャラクターに仕上がっているママにも注目。戦う時にチャンパオ(ワンピースみたいなカンフー服)の裾をめくり上げるのが超セクシー!


【同率3位】「師弟出馬 ヤングマスター」

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★主演、監督、原案、武術指導

色々あって道場を破門された兄弟子を連れ戻すべく旅をしながら悪との戦いに巻き込まれていくドラゴン(ジャッキー)。
後にジャッキーの十八番となる小道具を使ったアクションが随所に見られる。獅子舞にはじまり、扇、椅子、キセル、ロープ、スカートなどなど…とくに物語のキーアイテムである大扇子を使ったその優雅な戦闘スタイルは必見!投げた扇をキャッチするというワンシーンを120テイク以上撮ったというバケモノがジャッキー・チェンです。道場や兄弟子の前では情けないのに、一歩外に出た途端いきなり太々しくなる猫かぶりキャラ設定が他成龍作品ではみられない新鮮さあり。そして、ラストのバトルシーンが20分くらいある。一対一の戦いに20分。正直長いがこれが伝統的なクンフー映画というもの。でも長い。
あと、これを話すと別の意味で長くなるけど、ジャッキーのリアル弟分であるユン・ピョウとの椅子バトルが超エロスなので誰か分かってほしい。

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【同率3位】「蛇拳

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★主演

孤児として育ちとある道場で下男として働く簡福(ガンフー=ジャッキー)は、日々いじわるな師範代にいいようにこき使われ辛い毎日を過ごしていた。学はないが素直で優しいガンフーはある日、騒動に巻き込まれていた老人を持ち前の正義感から助ける。実はその老人こそ"蛇拳"の使い手であり、ガンフーの境遇に同情した老人は、彼に弟子ではなく友人として技を伝授する。しかし、その後この"蛇拳"を巡る因縁が明らかとなりガンフーは戦いに身を投じることとなる。
監督がユエン・ウーピンというクンフー映画界の超重鎮。ウーピン監督自身も当時まだ若かったが、すでに匠の技が光るアクションシーンの数々で魅せてくれる。そこにジャッキーの明るいキャラも相まって、シリアスとコメディの配分がこれまた絶妙で面白い。
ラスボス戦では蛇拳で対抗するも勝てないと悟ると、あっさりそれを捨てて"猫拳"で応戦するというおちゃめな急展開もあるよ。そして撮影中に食らった蹴りでガチで前歯が折れ、途中歯抜けで戦うジャッキー。
それまでのクンフー映画でお決まりだった"仇討ち物語"とは一線を画し、主人公の心の機微や成長の姿を重視した作品。定石であった師弟という関係性ではなく、友人という絆で技を教え仲を深めていく主人公と達人というのも新しい。


【ランクインは逃したが好き!】

少林寺木人拳

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★主演

目の前で両親を殺されたショックで聾唖になった主人公(ジャッキー)が、少林寺で出会った謎の達人に師事し復讐を果たすべく修行する姿を描いた仇討ち物語。
ストーリーは古典クンフー映画のテンプレだが、主人公と師匠の絆や確執など愛憎要素はわりと練られた設定。愛憎劇好きとしてはなかなか良きです。何より聾唖という設定がいい(真顔)
また、少林寺を出るためにからくり人形"木人"を倒さないといけないんだけど、これの見た目が超絶しょぼくて動きが非常にシュール。ずっと見てると逆に面白くなってくるほどに。これ見てモブ木人×ジャッキーでスケベな妄想をした人、私も同じです。

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ジャッキー主演映画の中で日本で公開された最古の作品(1976年)で古い。ゆえに本人も若くてぷりっぷり。このジャッキーの見た目が刃牙にしか見えないのは私だけか。


「レッドブロンクス

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★主演

米国でジャッキーブームを巻き起こし、ハリウッド進出の大きな足がかりとなった作品なんだけど、そんなことより黒のノースリーブでハイネックなトップスを着たジャッキーが性的だってことを伝えたい。


こうして列挙するとジャッキーは情けないキャラがデフォなのか思いきや、実際は熱血漢が高じて暴走気味になる軽度のサイコキャラがほぼなので単なる私の趣味です。

あと、一作品につき一つは伝説として語り継がれるやり過ぎアクションシーンの数々。常軌を逸したスリルジャンキーなジャッキーを見たいならここにあるやつ以外にヤバいやつがたくさんあります。(ポリスストーリーとか、サンダーアームとか)
過去のケガ年表みたいなまとめを彼が生きているその奇跡に感謝しかない反面、次第に見てるこっちも「今回は大した怪我してないの?撮影楽だったのかな?」って知らぬ間に感化されるから怖い。

冒頭でも触れた「ドラゴン」って名前のキャラはこれ以外に訳わかんなくなるくらい色んな作品に出てきます。なので、途中からジャッキーのキャラ名を真面目に覚えるのは止めた。だいたいドラゴンだし、だいたい同じキャラ設定だし、だいたいほぼ単なるジャッキーだから。でもそれが観たいの。ついに「ジャッキー・チェン」ってキャラ名で出てきた時は笑うのでぜひ「Who am I?」を見てね。

ジャッキー映画の素晴らしさはやはり「リアリティ」の一言に尽きるのではないでしょうか。身体を張ったアクションは勿論のこと、持てる全てを持って何事にも挑むその姿はガムシャラゆえに飾り気がなく、非常に人間味に溢れていて見る者の心を打つのではないかと。

タイトルが(暫定)なのはハリウッド作品を実はまだ全然観てないからなんです。
これからラッシュアワー辺りから観ていこうかと思います。