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「処刑人」

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「処刑人」
監督:トロイ・ダフィー
脚本:トロイ・ダフィー
主演:ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス
ジャンル:アクション、クライム
2000年公開/アメリカ映画/日本ではPG-12指定

■あらすじ
二卵性双生児のマーフィー(N・リーダス)とコナー(S・P・フラナリー)のマクマナス兄弟は敬虔なカトリック教徒。
聖パトリックの祝日に仲間といつもの店で酒を飲んでいたところ、店の立ち退きを要求するロシアン・マフィアと言い合いの末に喧嘩に発展する。撃退したものの後日報復にやってきて彼らを勢い余って殺してしまう。殺されそうになったための正当防衛と自分たちに言い聞かせ警察に自首することに。
警察では事情聴取を受けたものの、マフィアを殺した二人を「聖人」として扱うマスコミや市民の手前正当防衛が認められる。押しかけるマスコミの目を避けるため、一晩だけ独房に泊まったマクマナス兄弟はその夜神からの啓示を受ける。

『人の血を流した者は 男により報いを受ける その男とは神に許された者なり』
悪なるものを滅ぼし、
善なるものを栄えさせよ

その言葉が神からのものであると確信した兄弟は、街にはびこる悪人たちに次々と制裁を加えていく。

■ストーリー詳細と書簡(ネタバレあり)
カルト的人気を誇るアンチヒーロー映画で若き日のノーマン・リーダスも出演する本作。
魅力はなんと言ってもマクマナス兄弟のビジュアルと"聖人"としての仕事ぶり!そして、顔のいい二人がいつもお揃いで何かやってる様は見ていて眼福…!

マクマナス兄弟は雑居ビルのワンルームに同居し、いつもお揃いの服にお揃いのロザリオを身につけて、全身に同じタトゥーを入れている。いつも一緒に行動する仲良すぎる兄弟でもはや一心同体。
朝は教会に通い神に祈りを捧げ、精肉工場で一緒に働きながら暮らしている。多言語話者でその理由について「母親が教育熱心でね」と冗談っぽくマーフィーは言うが彼らの過去は謎。(過去についてはストーリーのラストで少し明かされます)
周囲の人間は2人を「天使」だと形容し、善良な一般市民だった彼らだからこそ手を下すのは悪人のみ。彼らが"聖人"として職務を果たす時に持ち合わせているのは殺意よりも使命感であり、罰を下す際の決まり文句はマクマナス家に代々伝わる祈りの言葉だと言う。

主のために守らん
主の御力を得て
主の命を実行せん
川は主の下に流れ
魂はひとつにならん
父と子と聖霊の…
み名において

 

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このセリフを捧げてから相手を殺すシーンが、この映画で一番印象的であり本作の代名詞。兄弟が二人で悪人の頭を後頭部から打ち抜くので弾道が十字にクロスするという演出もセリフと相まってかっこいい。
そして、罰を下し終えたあとはどんな悪人だろうと彼らなりのやり方で丁重に弔いを行なう。死者の目にペニーを乗せて腕は胸の上で十字にクロスさせるので。これはギリシャ神話では死者は生前の罪をあがなうためシャロン(三途の川の番人)に渡し賃を払うためである。

殺したロシアン・マフィア経由で最初の罪人に当たりをつけ、初仕事は見事大成功。偶然のその場にやってきた友人ロッコを仲間に加えて三人で次の仕事を探す。マフィアの使いっ走りをしていたロッコの情報網から仕事をこなしていたが、"聖人"の話はイタリアン・マフィアのボスであるパパ・ジョーの耳にも入り、三人を始末するため伝説の殺し屋イル・ドゥーチェが雇われる。
次のターゲットにパパ・ジョーを選んだ三人はアジトに乗り込むも返り討ちにされてしまいロッコは射殺される。パパ・ジョーは兄弟の始末を部下に任せてその場を去ってしまう。怒りに狂った兄弟は部下のマフィアを殺し、ロッコを弔っていたところにイル・ドゥーチェがやってくる。一触即発かと思われたが、兄弟の祈りの言葉に聞き覚えのあったイル・ドゥーチェは二人が自身の息子であることを悟り、その手で優しく二人の顔に触れるのであった。
後日、パパ・ジョーの裁判が行われたが裏で糸を引き無罪を確信している当人は余裕の様子。しかし、その場に突如マクマナス兄弟とイル・ドゥーチェ親子が乱入。彼らは「この場を自分たちの存在の明かす場に選んだ」として、法廷にいる人間に向かってこう言う。

「よく聞け」
「貧乏も飢えも許す」
「怠慢も堕落も許す」
「だが不正は許さん」
「悪事は見過ごさない」
「地獄の果てまで追いつめる」
「悪事を働く者を殺し 血の雨を降らせてやる」
「殺すな 姦淫するな 盗むな」
「これが神を信じる者の掟だ」
「人としても基本的な振る舞いだ」
「守らぬ者は死で報いよ」
「罪悪にも程度がある」
「それが軽い罪悪なら咎めはしない」
「だが 度を越せば俺たちの出番だ」
「お前たちも罪を犯せば必ず俺たちが現れる」
「それは報いを受ける時だ」
「好きな神の下へ送ってやる」

 

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そして、パパ・ジョーに神の裁きを下した三人は姿を消すが、人々は彼らを"聖人たち"と呼び街には大きな波紋が残ることとなった。

また、作中では兄弟を追うFBIのスメッカー捜査官(ウィレム・デフォー)がかなり個性的。
優れた洞察力でマフィア殺しの犯人に迫っていくが、捜査が進むほどに法の番人でありながら犯人たちの行いに正しさを見出していく。人に対して上から目線でよく怒り感情の起伏が激しいキャラだが、味のあって憎めないキャラ。最終的には兄弟と手を組んで法廷襲撃の手引きもすることに。パパ・ジョーに捕まった三人の援護で情婦を装いアジトに潜入するシーンがなかなかに強烈なので乞うご期待。